「財布を盗ったでしょ」
「通帳がなくなった。あんたしかいない」
身に覚えがないのに、犯人にされる。
何度も、何度も。
これは介護の中でも、家族の心を一番削る症状のひとつです。
この記事では、認知症で起こる「物を隠す・盗られたと言う」症状(物盗られ妄想)の原因と、家族が壊れないための現実的な対応法をお伝えします。
物盗られ妄想とは?
物盗られ妄想は、認知症でよくみられる症状のひとつです。
- 財布がない
- 通帳がない
- お金が減っている気がする
- 誰かに盗られたに違いない
実際には、自分でしまい込んで忘れていることがほとんどです。
しかし本人にとっては「本当に盗られた」という現実になっています。
なぜ家族が疑われるのか
一番つらいのはここです。
なぜ他人ではなく、家族が疑われるのでしょうか。
① 一番身近にいるから
接触頻度が高い人ほど疑われやすくなります。
② 安全な相手だから
無意識のうちに「本気で怒っても関係が切れない相手」を選んでいます。
③ 不安のはけ口になっている
記憶が抜ける不安を、誰かのせいにしないと心が保てない状態です。
つまり、あなたが信用されていないからではありません。
むしろ、甘えられる存在だからこそ起こることも多いのです。
やってしまいがちなNG対応
- 「盗ってない!」と強く否定する
- 理屈で説明する
- 証拠を探させる
- 感情的に言い返す
正論は、ほとんど効果がありません。
なぜなら問題は「物」ではなく、不安だからです。
家族が壊れないための現実的な対応法
① まずは一緒に探す
否定よりも「一緒に探そうか」が有効です。
② 定位置を決める
財布や通帳の置き場所を固定し、写真やメモで“見える化”します。
③ 予備財布を用意する
少額だけ入れた安心用の財布を作る方法もあります。
④ 言葉を変える
「盗られた」ではなく「なくなったね」と言い換えます。
⑥「安心用の財布」を用意する方法
物盗られ妄想が強い場合、少額だけ入れた“安心用の財布”を用意する方法があります。
目的はお金を隠すことではなく、「持っている」という安心感を保つことです。
■ 財布は同じもの?似ているもの?
できれば本人が普段使っている財布そのものを使うのが理想です。
- 手触りや重さが安心材料になる
- 「これは自分の財布」と認識しやすい
- 別の財布だと「すり替えた」と疑われる可能性がある
どうしても難しい場合は、色・形・サイズがよく似たものを選びます。
まったく違うデザインは避けましょう。
■ 中身の作り方のポイント
- 1,000円〜3,000円程度を入れる
- 小銭も入れて重さを出す
- レシートやポイントカードを数枚入れる
空っぽに見えないようにすることが大切です。
■ さらに効果を高める工夫
- 財布の定位置を決める
- 一緒にしまう習慣をつくる
- ときどき一緒に中身を確認する
これは「だます方法」ではありません。
不安を減らし、衝突を減らし、家族の心を守るための環境調整です。
ただし、金額を毎日細かく確認する方や被害妄想が強い場合は、主治医やケアマネジャーに相談してください。
⑤ 第三者の力を借りる
ケアマネジャーや医師に相談することで、症状として説明してもらうのも有効です。
それでも、つらいとき
何度も疑われると、心が折れます。
優しくできない日があってもいい。
距離を取りたくなる日があってもいい。
あなたは犯人ではありません。
これは、病気の症状です。
どうか一人で抱え込まないでください。
まとめ
- 物盗られ妄想は認知症の症状のひとつ
- 家族が疑われやすいのは自然な流れ
- 正論よりも不安への対応が大切
- あなたが悪いわけではない
介護は、正しさよりも「心を守ること」が大切です。
あなたの心も、守られていいのです。
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