「父を亡くして12年。なのに、あの時の悲しみは今も胸にあります」
そんな気持ちを抱える方は、実はとても多いのです。
そしてその揺れを丁寧に扱うことを “グリーフケア(悲嘆ケア)” と呼びます。
■ グリーフ(悲嘆)とは?
グリーフとは、大切な人・もの・役割を失ったときに生じる、自然で健康的な心の反応のことです。
対象は、死別だけではありません。
- 離婚や別れ
- 健康の低下
- 仕事や役割の喪失
- 子どもの独立
- 長年続けてきた習慣の変化
「失う」という出来事は、それほど大きく心を揺らします。
■ 悲しみは“ひとつの感情”ではない
グリーフは、ただ泣くだけではありません。人によってさまざまな形で現れます。
- 強い悲しみ
- 怒り
- 罪悪感(もっとできたのでは…)
- ぽっかり空いたような虚無感
- 思い出して涙が出る
- 忙しさでふたをしてしまう
- 不眠や集中力の低下
どれも、心が懸命にバランスを取ろうとしているサインです。
「こんな気持ちになる自分は…」と思う必要はまったくありません。
■ 悲しみは、時間とともに真っ直ぐ癒えるものではない
「時間が解決する」と言われますが、実際は違います。
良い日と悪い日を行ったり来たりしながら、少しずつ波が穏やかになっていく。
グリーフは“回復”よりも“波の変化”に近いのです。
10年、20年たっても大切な人を思って涙が出るのは、自然なこと。
愛していた証拠そのものです。
■ グリーフケアの基本は「無理に忘れようとしない」こと
① 悲しみを“正常な反応”として受けとめる
悲しむのは弱さではありません。心が自然と行う回復のプロセスです。
② 誰かに話す/書く
言葉にすることで心が整理されます。
信頼できる人・専門家・日記・ブログ…どれでも構いません。
③ 頑張りすぎない
表向きは普通に生活できていても、心は疲れています。
小さな休息が大切です。
④ 感情にふたをしすぎない
泣きたい日は泣く。思い出したくない日は逃げていい。
あなたのペースが正解です。
⑤ 思い出を「消さない方向」で扱う
好きだった場所を訪れる、写真を見る。
悲しみを排除するのではなく、人生の一部としてそばに置くことが、心を整えていきます。
■ グリーフケアが必要なタイミング
もし次のような状態が長く続く場合、専門家(心理士・医療機関)に相談して良いサインです。
- 寝られない・食べられない
- 罪悪感が止まらない
- 無気力が続く
- 日常生活に支障が出ている
- 話す相手がまったくいない
■ “悲しみながら生きていく”という生き方
悲しみを消すのではなく、悲しみと共に生きられる自分になること。
そのプロセスが、ひとりひとりの人生を静かに支えてくれます。
悲しさを、そっと心にしまったまま生きていく。
涙が出るなら、それは心が動いている証。
悲しみがあるなら、それは誰かを深く愛した証。
どうか、そのやさしい悲しみのまま、生きていけますように。


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